民法903条関係 被代襲者の特別受益
1 論点
被代襲者が生前に受けた特別受益が,代襲相続人の特別受益に当たるか。
2 結論
代襲相続人の特別受益に当たる(積極説)。
積極説が,現在の実務・通説。
片岡武・東京家庭裁判所部総括判事/管野眞一・盛岡地方裁判所二戸支部主任書記官(第3版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(平成29年)276頁),岡口基一・大阪高等裁判所判事(要件事実マニュアル5第3版(平成22年)200頁),松原正明・東京家庭裁判所部総括判事(基本法コンメンタール相続 第5版(平成19年)59~60頁)。
最高裁判所事務総局家庭局は『昭和54年度高等裁判所管内別家事事件担当裁判官会同概要』において,「被代襲者の特別受益については,昭和35年12月の家庭局見解を改め,積極説をとりたい。」と明言している(家庭裁判月報昭和56年11月第33巻第11号)。
福岡高等裁判所平成29年5月18日判決(判例タイムズNo.1443の61頁以下)も,積極説。
3 理由
代襲相続人としては,被代襲者が生存していたならば置かれていたであろうよりも有利な地位に置かれるべきではないから。